第9回勉強会抄録
1.「新しい高純度透析パイピングシステムの試み 〜PVDF-BCFシステム」 ジョージフィッシャー(株) 営業部 プロジェクト推進部 木下秀之 添加剤をまったく含まない,高純度フッ素樹脂PVDF配管材料と,接合部の段差のないBCF溶着工法の組合せにより,配管素材からの溶出及び接合部段差での微生物の付着・増殖の問題を低減する配管システムです.
2.「whole-PTHの測定法とその意義」 住友製薬バイオメディカル 東京支店 営業部 早川和善 副甲状腺ホルモン(PTH)は血中Ca値と共に,原発性および続発性副甲状腺機能亢進症などの診断・治療の判定に欠かせない指標となっています. 近年,透析患者の血中には1-84PTHのほかにN端が欠けた7-84PTHが存在することが報告され,従来の測定法では7-84PTHも交差するために,副甲状腺機能を過大評価してしまう可能性が示唆されます. 1-84PTHのみを特異的に測定するwhole-PTHは,PTH分泌量を正確に捕らえることから,透析症例における無形成骨の診断,治療法の選択および経過観察に有用である.インタクトPTHとwhole-PTHで,相反する診断結果が得られる症例があるのでこれを報告します.
3.「血液透析時の低分子ヘパリンの検討」 東京医科大学八王子医療センター 臨床工学部 山下忠邦,久野木忠,舟久保洋行,上野隆光,杉原栄司,鈴木紀江,畑谷重人 目的 血液浄化を行う際の抗凝固剤として,低分子ヘパリン(LMWH)は有用な抗凝固剤であるが,簡易的なベッドサイドモニターがないため,各メーカーの投与量早見表を用いて使用量を決めている.血液透析時のLMWHの使用についてサイエンコ社製血液凝固・血小板機能分析装置ソノクロット®を用いて検討した. 対象および方法 対象は,血液透析時にLMWH使用の維持透析患者20症例,方法は,透析開始前,スタート時,1時間後,2時間後,終了時のLMWHの血中濃度,ソノクロット®を用いて血液の凝固を測定するソノクロット活性化凝固時間(Son ATC),フィブリノゲンが析出され,フィブリンゲル形成の度合いを数値化したクロットレート(CR)を測定した. 結果 LMWHの血中濃度は,透析開始前0.04 IU/mlが,スタート時0.23±0.06 IU/ml,1時間後0.28 ±0.1 IU/ml,2時間後0.33±0.14 IU/ml,終了時0.31±0.15 IU/mlであり,透析施行中有意に上昇していた.Son ATCは,各測定時間であまり変化が見られなかった.CRは,透析開始前に比べ透析中は低下し,血液が凝固しずらい状況であることが確認された. 結語 LMWHの使用時に,ソノクロット®を用い,CRを測定することで,LMWHの使用の指標に成ると思われた.今後は症例数を増やし,CRと使用量の関係について検討していきたい.
4.「ロック式ニードルレス混注管を用いた新返血法の工夫」 南多摩病院人工透析科1), 南多摩病院透析室長2) ○山崎聡子(やまざき さとこ)1), 岡田国男1), 今田純一1), 松尾朋昭1), 川畑政弘1), 安本浩二1), 北川元信2), 【目的】東レと中外製薬の共同開発によって作製された,ロック式ニードルレス混注管を用いて,回収時に生食ラインを回路から外し,A側穿刺部近くに繋ぎ直し返血を行うという新しい発想の回路を使用し,その性能評価,使用経験などを検討した. 【方法】全透析患者を対象に新回路を使用し,スタッフにその安全性,利便性などについてのアンケート調査を行い,その性能評価を行った. 【結果】新回路を使用することによって,安全に回収を行うことができた.また従来の生食返血に比べ,同量の生食量でも回路内の残血量がより少ない回収を行うことができた. 【結語】新回路を使用する際には,ロック式ニードルレス混注管の取り扱いに多少の慣れは必要だが,安全に,また従来の生食返血法に比べ,同量の生食量でも回路内の残血量がより少ない回収を行うことができた.
5.「人工透析管理システム(Miracle DIMCS21)と富士通電子カルテ(EX)との連携」 東海大学医学部付属八王子病院 血液浄化センター 1),同腎透析科 2) 河村吉文(カワムラ ヨシフミ)1),藤井誠二1),長谷川由美子1),梶原吉春1),緒方由紀子1),虎戸寿浩1),平野浩二1),鍵和田直子2),野村幸範2) 【目的】本院使用中の富士通電子カルテ(EX)に人工透析管理システム(Miracle DIMCS21)を組み込み,患者情報を共有し有用な血液浄化業務を図る. 【方法】透析管理システムと電子カルテのネットワークを構築し電子カルテシステムから患者基本情報,予約情報,検査結果を送信し,人工透析管理システムから透析記録を電子カルテに送る.診療報酬は電子カルテ医事会計システムより行った. 【結果および考察】電子カルテを基幹とし,医療情報システムを部門システムと捕らえることで有用な業務を施行できた.
6.「生食置換返血後の回路内抜液の研究」 南多摩病院人工透析科1), 南多摩病院透析室長2) ○岡田国男(おかだ くにお)1), 今田純一1), 松尾朋昭1), 川畑政弘1),山崎聡子1), 安本浩二1), 北川元信2), 【目的】厚生労働省の推奨する生食置換返血法は貧血に及ぼす影響もなく非常に安全で簡便であるが,医療廃棄物の重量増加は著しい.返血終了後にダイアライザー・回路内の生食を抜く事は必須である.そこで,今回現状の機械で特別な改造を行わず生食置換返血後のダイアライザー・回路内抜液法をいろいろ試みたので報告する. 【方法】(1)返血終了後,透析液側より除水ポンプを使い陰圧を掛けて回路内生食を循環させて抜液する方法. (2)返血終了後,血液ポンプで回路内生食を陽圧によりダイアライザーから透析液側に強制的に抜液する方法. (3)ポンプ類を使わずに自然落差(排液)だけで抜液する方法. 【結果】(1)安全警報作動によりほとんど抜液出来ず. (2)血液ポンプを回し,ダイアライザー出口を閉塞する事により抜液完了. (3)未使用ダイアライザーでは抜液完了も,使用済みダイアライザーでは抜液不十分. 【結論】工夫次第で使用済みダイアライザー・回路からの抜液は可能だが簡便性は良いとは言えない. 特別講演「血液浄化技術の今後の展望」 東海大学総合医学研究所分子病態学部門 斉藤 明 【要旨】 血液浄化法は,腎不全における血液透析から臨床応用され,その後薬物中毒,急性肝・膵不全,そして多臓器不全,さらに自己免疫治療やその他多くの疾患に応用されている.血液/腹膜透析,血液(透析)濾過,プラスマフェレシス,血液(血漿)吸着,白血球除去,その他の方法が用いられ,救命率向上に寄与している.治療の際,体外循環技術と人口膜を用いることが多く,治療システムと血液浄化膜の開発が治療法改良の主役となってきた.今後も持続治療技術と人口膜の表面の化学修飾による除去対象物質の除去選択性や血液適合性の改善がなされると思われるが,臓器機能にとり主要な役割を果たす細胞やその幹細胞を利用したバイオ人工臓器,または遺伝子治療,再生治療が血液浄化効率向上や,合併症治療に積極的に取り入れられるであろう. |