@「 PMX-DHP療法の最近の話題 」

東レ・メディカル株式会社 救急・集中治療製品事業部門
東京第1課 谷口 信二

1994年に発売になったPMX(トレミキシン)は、救急・ICU領域において幅広く使用されるようになり、その有用性及び作用機序等の報告は、多数の学会・研究会等にて報告されている。また、近年、呼吸器内科領域における間質性肺炎(IPF)の急性増悪症例などにも当治療法を用いるケースがあり、今後の厚労省班会議の自主研究結果にも期待したい。
今回、その様な最近の話題をご紹介させて頂きます。

A「 人工腎臓用透析液カーボスターについて 」

味の素ファルマ株式会社 学術担当
齊藤 広行

透析療法の創成期には、生体内の主な緩衝系の成分である重炭酸ナトリウムを
アルカリ化剤として用いられていましたが、安定性は満足いくものではありま
せんでした。
 その後、酢酸ナトリウムを用いた透析剤が開発され、取扱いが容易であることから透析療法が普及しました。
 一方、生体内にほとんど存在しない酢酸ナトリウムが負荷されることにより
心機能抑制作用や末梢血管拡張作用に起因した透析中血圧低下などの副作用が
問題となり、いわゆる酢酸不耐症が表面化しました。
 このため、再び重炭酸系透析剤が開発されましたが、安定性という点において製剤技術的観点から、少量の酢酸を含有せざるを得ませんでした。
 しかし、この酢酸が血管拡張作用を有するnitric oxide(NO)産生亢進、心筋収縮抑制の起因となっており、これらは透析時低血圧症との関連性が高いことが知られています。
 また、代謝性アシドーシスは慢性腎不全患者のタンパク・アミノ酸代謝及び骨代謝に悪影響を及ぼし、臨床的に好ましくない状態に陥らせるおそれがあるため、K/DOQIガイドラインでは、代謝性アシドーシス是正効果指標である透析前血中重炭酸濃度を22mEq/L以上に維持すべきであると推奨しており、代謝性アシドーシスを是正することに臨床的意義あると考えました。
 このような背景から、酢酸を全く含まず、代謝性アシドーシス是正効果に優れた透析剤の開発に着手し本邦で初めて製剤化に成功いたしました。

B「 当センターにおける2007年患者動向について 」

東京医科大学八王子医療センター 臨床工学部
杉嵜有里、久野木忠、村上秀崇、杉原英司、鈴木紀江、畑谷重人


目的:当センターにおける透析導入や近隣クリニックからの各種検査や手術目的にて、転入院された患者の動向について検討した。

対象:2007年1月から12月までの1年間に、新しく透析を施行した患者409名において、どのような目的で入院されたかについて検討した。

結果:新規透析患者409名のうち、透析導入81名、各種検査入院70名、治療・処置183名、手術75名であった。
透析導入患者の58名が他のクリニックへ転院されていた。検査目的の患者は、腎臓関係検査と心臓関係検査が多く、腎臓関係検査では腎移植前検査が20名、心臓関係検査ではCAGが23名と多かった。治療・処置目的の患者は、シャントトラブル、腎臓、心臓、呼吸器関係の治療・処置が多く、シャントトラブルでは36名、腎臓関係では造影剤使用後の治療が7名、心臓関係ではPCIが7名、呼吸器関係では肺炎が10名と多かった。手術目的の患者は腎臓関係の手術と、眼科関係の手術が多く、腎臓関係の手術では腎移植が15名、眼科関係の手術では白内障手術が16名と多かった。

結語:透析導入患者の数も多く、維持透析患者の高齢化、長期化により、各種合併症による緊急検査・処置、手術などが必要になり転入院される患者も多くなってきている。今後もこのような転入院は多くなると思われるため、各種検査や手術を理解した上で透析が行えるよう、日頃より技術と知識の向上に努めることの必要性を再確認した。

C「 新しい洗浄剤「酸素系抗菌洗浄剤OXY-Mix」の使用経験 」

三友会 あけぼのクリニック 臨床工学課1)
三友会 あけぼの病院 臨床工学課2),三友会 あけぼの病院 腎臓内科3)
大水 剛1),桃園 嘉貴1),村山 順子1),稲葉 光史2),古波蔵 伸2)巽 洋2)

【はじめに】
今回われわれは、今までに無い全く新しい洗浄剤、ディースリー社製の「酸素系抗菌洗浄剤OXY-Mix(以下OXY-Mix)」を使用する経験を得たので、6ヶ月間使用した結果を報告する。

【方法】
OXY-MixはA剤、B剤の2種類の粉末をRO水にて溶解して使用するので、薬剤の配合を変更して使用した。
方法1:A剤 2kg + B剤 1kgの合計3kgを20LのRO水にて溶解し、15%溶液を作成。末端濃度を2500ppmとした。
方法2:A剤 1kg + B剤 2kgの合計3kgを20LのRO水にて溶解し、15%溶液を作成。末端濃度を2500ppmとした。
洗浄効果について、透析液エンドトキシン濃度(以下ET値)と生菌数の推移と、コンソール排液側配管に対し、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月における配管内側の変化を走査電子顕微鏡下で観察した。また、部品に対する侵襲性について、実際装置に使用されているOリング(カプラOリングとバイパスコネクタOリング)に対し、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月における引張強度を測定した。

【結果】
方法1、方法2とも除菌効果及び部品に対する侵襲性に問題は見られなかった。
方法2については、配管内に1ヶ月目ごろからタンパクの付着を認め、3ヶ月目に3日間次亜洗浄を行った。

【考察と感想】
粉末を溶解する際、軽い刺激臭を伴う。作成した薬液は3日間で洗浄効果が落ちるため、継ぎ足しができない。 「方法2」において、タンパク付着を認めたため、2剤の配合の割合・貯留方法・末端濃度など、検討する必要がある。
【結語】
OXI-Mixによる透析液ラインの洗浄は、ET値を測定感度以下に保つことができ細菌の検出もなく、「方法1」においては安全に使用できた。

D「 シャント穿刺失敗記録の分析より 」

東京都国民健康保険団体連合会 南多摩病院 人工透析センター 
岡田国男・松尾朋昭・山崎聡子・安本浩二・今田純一・川畑政弘・北川元信

【はじめに】
一昨年透析業務の大幅な見直しを行い一人穿刺開始・返血終了業務を複数人穿刺開始・返血終了業務に変更した際、穿刺状況の把握のため穿刺失敗記録の集計を始めた。過去2年間のデータを検討したので報告する。

【対象および方法】
維持透析患者120名に対して平成18年1月から平成19年12月までの穿刺失敗記録をさまざまな角度から分析を行った。

【結果と考察】
平成18年度の失敗合計は475回、月平均39.5回だったが平成19年度は428回、月平均38.8回と減少している。日数の少ない2月の平均失敗回数45.5回、1月の平均失敗回数37.5回と2月の方が多い。つぎに週単位では月水金が火木土より失敗回数が多いのは月水金の患者数が多い事から有意差はなかった。しかし、月火・水木・金土と3群に分けると少し有意差が現れる。2年のデータで共通しているのは週の初めは失敗回数が少なく週末になると失敗回数が増える傾向を示した。

【まとめ】
今回の分析では週初めの失敗回数が少なく週末になると失敗回数が多くなる事が明らかになった。

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