@ ブラッドアクセスカテーテル

ダブルルーメンの比較検討

 

ユニチカ株式会社メディカル事業部  

沼田 市郎(ぬまた いちろう)

 

近年、様々な血液浄化に対応するために数多くのブラッドアクセスカテーテルが考案され、製品化されてきた。ブラッドアクセスカテーテルの機能としては、挿入のし易さ、安定した流量の確保、以上2点が最も求められている。以前から広く使われているダブルルーメンカテーテルのダブルアクシャル型とコアクシャル型の形状、構造、原理を紹介する。また、最近、エンドホール型ブラッドアクセスカテーテルが多く使われつつあるが、その最大の特長は血管壁へのへばりつき防止形状である。問題点としては、挿入の難しさがあり、その比較検討をおこなった。挿入抵抗値に関しては、データ上では当社新製品である「ツインエンド」が最も低い数値を示している。当社「ツインエンド」は先端形状の工夫だけではなく、体内で優れた柔軟性を示す特殊ポリウレタンの使用とダブルスタイレットにより、スムーズな挿入性が確保されている。どのメーカーのエンドホール型ブラッドアクセスカテーテルも比較的太めで、高フロータイプである。当社「ツインエンド」は、高フローであるのみならず、カテーテル内外面にウロキナーゼを固定化し、血栓形成による血流量不足の防止を実現した。当社「ツインエンド」はエンドホール形状と抗血栓性素材を組み合わせた唯一の画期的なブラッドアクセスダブルルーメンカテーテルである。


A 低分子ヘパリンにおけるレビパリンナトリウム(ローモリン)の特性について

 

日本シエーリング株式会社 治療薬事業部学術課

古賀亮介(こが りょうすけ)

 

レビパリンナトリウム(以下、RV)は、平均分子量が約4,000と未分画ヘパリンおよび既承認の他の低分子ヘパリン(以下、LMWH)に比べて少なく、また抗]a因子活性/抗Ua因子活性の比が3.86.4とヘパリンおよび他のLMWHよりも高いという特徴を有する製剤である。ヘパリンの抗凝血作用は、主にアンチトロンビンVとの結合を介した阻害作用であるが、分子量分布が多様であるため薬剤間の特性が異なる可能性がある。一般にLMWHは、安全性の面から出血のリスク回避および慢性透析での脂質代謝に及ぼす影響が少ないとされる。また、LMWHは未分画ヘパリンに比べて半減期が長く、この薬物動態的性質は透析時のヘパリン使用量の軽減につながることが期待される。RVは199912月より本邦でも使用可能となり、平均分子量・分子量分布幅が最も小さい精製されたヘパリン製剤として使用されている。これまでの報告では抗]a・抗Ua因子活性を指標に各種LMWHの出血時間に及ぼす影響が検討され、選択的に抗]a因子活性作用の高いLMWHほど出血時間が短いことが示唆された。また、慢性透析で従来から使用されていたLMWHからRVに変更し、透析必要量の減量を試みたところ従来に比べ約25%の減量が可能であった。RVは海外において第二世代のLMWHと位置づけられているが、本邦におけるデータからもその特性が異なることが示唆される。


B フレゼニウスポリスルフォン膜透析器FPXについて

 

フレゼニウス メディカル ケア ジャパン株式会社1

フレゼニウス川澄株式会社2

清水英範(しみずひでのり) 1,後藤理恵2,平田麻由子2,神野浩司2

 

中空糸濾過フィルターの膜素材にポリスルフォンを選択したベルグホッフ研究所の依頼により、1982年にF60フレゼニウスポリスルフォン膜は誕生しました。F60は膜厚が40μmで従来のフィンガー構造から多孔性のスポンジ構造に改良され、この濾過フィルターは、HDHDFHFどの透析モードでも優れた性能を示しました。β2MGのクリアランスも56ml/minと比較的高値で、生体適合性にも優れています。透析における“ゴールドスタンダード”と呼ばれたF60は、現在へと受け継がれ、21世紀にはFPXへと進化しています。FPXの特徴は、内径が185μmと極小化、膜厚も35μmとさらに薄く、中空糸内膜表面は、より滑らかで抗血栓性が向上しています。マイクロウェーブとピナクル構造の採用により、透析液の流れは均一となり、チャネリングも防止されています。次にコンパクトな設計によりプライミングボリュームは低減し、プライミング時間も半減されています。廃棄コストも低減化されました。フレゼニウス社独自のインライン蒸気滅菌は、滅菌と同時に残留物も除去します。1994年以降、日本メーカー各社のポリスルフォン膜が開発されていますが、その性能や滅菌方法、さらに溶出物や残留物にも、各々相違があると言われています。今回は、PVP溶出について若干の検討を試みます。


C 自動返血装置の試み

 

八王子東町クリニック臨床技術課1)、心施会府中腎クリニック2)、東レ・メディカル(株)企画開発部3)

樋貝弘明(ヒガイコウメイ)1)、山内 工1)、富永正志2)、近藤敬二2)

佐藤 優2)、土井正勝2)、杉崎弘章2)、小林剛宏3)、今井正巳3)

 

[目的]

 日々の透析操作の「省力化と安全性向上」を目的に返血を中心とした自動化を試みた。第48回(社)日本透析医学会において個人用透析装置(TR−7000S)における自動化を報告。今回は透析用監視装置(TR−3000MTR−2000MV)で自動化を試みたので報告する。

 

[方法]

 透析開始より終了までの工程で、1)プライミング、2)返血・回収、3)廃棄物処理のための抜液が自動化可能で、NCクランプ、補液切れ検知器、気泡検知器などを追加装備し、通常施行している工程を自動化したシステムとした。尚、使用液はETや血栓混入の懸念から、生理食塩液による自動化システムとした。

 

[結果]

 1、事故及びそれに繋がる恐れのある異常は皆無で安全性は担保できた。2、自動化導入1週間のところで作業時間の著しい短縮効果を認めた。3、抜液により廃棄物の重量を軽減しえた。

 


D プライミングロート用除菌洗浄タブレットクローリンPONの使用経験

 

東京都国民健康保険団体連合会 南多摩病院人工透析科1)、南多摩病院透析室2)

安本浩二(やすもとこうじ)1)、岡田國男1)、松尾朋昭1)、山崎聡子1)

今田純一1)、川畑政弘1)、北川元信2)

 

【はじめに】

プライミング時の生理食塩液(生食)を排液するのにプライミングロートは大変便利である。しかし、消毒・洗浄等を定期的に行わないとチューブ内に雑菌が繁殖して見た目にも不快・不潔になる。最悪の場合は逆止弁の所が詰まり、生食が溢れ出てしまい余計な仕事が増える事になる。

 

【目的】

プライミングロート用除菌洗浄タブレット『クリーンPON』及び界面活性剤入り『クリーンPONプラス』の除菌洗浄効果を評価する。

 

【方法】

平成179月よりベッドサイドモニター(DCS−27)30台、個人用透析装置(DBB−27)2台のプライミングロートに2週間置きに『クリーンPON』を投入して観察した。比較の為、5ヶ月経過したところで6台は『クリーンPON』の投入を中止した。

 

【結果】

8ヶ月間の結果、2週間置きに『クリーンPON』を投入していた26台に関しては排液チューブに雑菌の繁殖は認められなかった。3ヶ月前より『クリーンPON』を中止した6台のうち、2台のチューブに黄ばみが生じた。

 

【結語】

3ヶ月と期間が短く、チューブが黄ばむ程度だったがこのまま消毒・洗浄を行なわなければ逆止弁に詰まりが生じるのは想像できる。プライミングロートに『クリーンPON』を2週間置きに投入するだけの簡単な方法でチューブの汚れや詰まり防止に十分効果が認められた。


E 当センターにおける急性血液浄化療法の現況

 

東京医科大学八王子医療センター  臨床工学部1)、外科学第5講座2)

舟久保洋行1)、上野隆光1)、杉原英司1)、鈴木利江1)、久野木忠1)、畑谷重人1)

城島嘉麿2)、岩堀 徹2)、長尾 垣1)

 

[目的]

当センターにおける急性血液浄化療法の現況について検討した。

 

[対象・方法]

20051月から20063月までの13ヶ月間に施行した患者110名(男姓68名、女性42名、平均年齢55.56歳)で、急性血液浄化の件数、基礎疾患等を検討した。

 

[結果]

施行症例は、CHDF80症例524回、PMX32症例46回、PE19症例55回、DHP8症例12回、HDF5症例6回、IA4症例18回、DFPP3症例7回でCHDFが全体の78.4%を占めた。生存率は76.4%であった。

基礎疾患は主な疾患でCHDFではMOF17症例98回、ARF13症例55回、CHF11症例70回、重症膵炎5症例39回、PMXではseptic shockおよびMOF29症例42回、PEでは肝移植12症例43回、腎移植2症例2回、DHPでは薬物中毒8症例12回、HDFでは肝不全5症例6回、IAではギランバレー症候群2症例11回、DFPPでは重症筋無力症3症例7回、腎移植2症例3回、肝移植1症例2回であった。

 

[結語]

13ヶ月の急性血液浄化施行人数は110名であり、生存率は76.4%であった。開始時期や疾患に対しての血液浄化法の選択、血液浄化法の諸条件等の検討が今後の課題であり、CEも各科の医師と連携し積極的に治療に参加でき、また多種にわたる血液浄化法に対応できるよう日頃より技術と知識の向上に努めることの必要性を再確認した。


<特別講演>

 

透析におけるリスクマネジメント

−事故対策への当院の取り組み−

                           

社会保険中央総合病院 臨床工学技士室

山家敏彦

 

【はじめに】

透析医療は、生命維持管理装置をはじめとした装置が集中し、異なる手技、治療経過が同時並行して進行していることなどが、他の医療と大きく異なる点である。また、多くの職種が混在する典型的チーム医療ともいわれる。このような特徴は、透析医療が容易に事故に結びつきやすい環境にあることを予想させる。事実、これまでの厚生労働科学研究報告においても、必ずしも透析医療事故が低減しているとは言い難い。このような状況の中、医工学教育を受けた唯一の職種である臨床工学技士による事故防止対策への積極的な取り組みが必須であると考える。

【当院における取り組み】

どのような目的、概念形成をもって全体のmotivationを維持するかが重要である。リスクマネジメントをテーマにした定期的な勉強会と日々のミーティングの中でインシデント・アクシデントを報告し合い、些細な体験でも共有し合う一体感がチームには必要である。講演では、当院におけるこのような目的意識のもと、演者が体験した具体的な失敗を告白しながら、リスクマネジメントへの取り組みを紹介し、拙論としたい。

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